砂漠の中のねこ

息継ぎがしたい

グレープフルーツの話

 

音楽というものは非常に罪深い。様々な記憶を呼び起こすから。苦しかったこととか。幸せだったこととか。絶望とか。付き合っていた人のこととか。幼かった自分とか。

 

今日久しぶりにAlexandrosを聴いた。先日彼が「閃光」のMVが最高過ぎると教えてくれて一緒に見たことに影響された。Alexandrosは、サトヤスが勇退する直前のツアーで埼玉公演を彼と観に行った。元々私が好きで、彼はあまり詳しくなかったはずだけど、ようぺの歌唱力とスタイルの良さに驚愕したようで、「水飲んでるだけであんなかっこいい人いる?」と興奮していた。確かにアンプに片足かけて水を飲むようぺは最高にイケていた。

 

私がこのバンドを知ったとき、AlexandrosはまだChampagneだった。初めて聞いたのはShe's Very。これは私が人生で唯一思い出してはいけない男が教えてくれた。野垂れ死んでいますように。

もしも私の周りにAlexandros好きがいなかったとしたら、私の中でAlexandrosはこの野垂れ死ぬ野郎とだけ結びついてしまっていたことでしょう。幸いなことに、Alexandros溺愛の友人、会社の後輩などが記憶を上塗りしてくれた。そして今は彼と埼玉で聴いたアーティスト、MVがかっこいいアーティストなどなど(なんかこう言うとすごく安っぽい感じになるけどちょっと表現考えるのめんどくなった)として私の日常に存在してもいい形として成立している。

 

一番好きな曲はLeaving Grapefruits。だけどこれも昔付き合っていた人のことを思い出す。というかそのとき自分が思っていたこととか、大変だったな、みたいなこととかを。

 

これまで小さな不穏な出来事はあったものの、本格的な大きな喧嘩をしたことはなかった私たちが、のちにFIN.になるきっかけとなる大喧嘩をぶちかました。むかつきすぎて深夜にぶん殴ったのを覚えている。付き合った人をぶん殴ったのはあれが最初で最後だったな。

そこから全く口をきいてもらえなくなったけど、毎回少しでも喧嘩気味になると私が歩み寄らねばならない人だったので、そのときも何度か試みた。でも出て行けと言われた。その人の性格上、煽っているだけで、一度そういう態度を取ってしまった以上後に引けずどう私と接すればいいのかわからないだけなのはわかっていたけど、何度か私がプライドを押し殺して試した歩み寄りにこれでもかと頑固を貫き応じなかったのと、盗み見たLINEに元カノとのやりとりがあったのでもういいやと思った。元カノとは今でも友達であることは知っていたので連絡を取り合っていること自体はそこまで嫌ではなかったものの、許せなかったのは、遡っていくとこれまでずっと、私と喧嘩っぽくなったタイミングで必ずそいつに連絡していたこと。

 

溜まっていた振休、有給を使い倒してすぐさま家を決め、引っ越し業者を手配した。業者が事前に送ってくれた段ボールたちは隠した。タンスの裏とか、押入れの奥深くに。古いけどバカみたいに広い家で良かった。

 

この頃、仕事が終わって最寄駅から家までの一本道を歩くたびに、Leaving  Grapefruitsを聴いていた。

 

 

もう一度出逢うなら

今度はどんな二人になろうか?

その時はどんな話題で笑おうか?

どんなことで泣こうか?

思い出してみても 二人は全部 全部 出し切って

これ以上ないほどの感情を出して

疲れ果てたのかな

 

 

私がしんどいことがあって泣いていても必ず笑わせてくれていたのに、毎日突拍子もないことばかりでなにを話しても楽しかったのに、もう無理なのか。いつかまた笑って話せる日が来るのだろうか。本当にもう無理なのだろうか。そんな気持ちだった。

 

でも、何度もこちらが歩み寄ろうとしたのに目も見ない男、そもそも喧嘩の発端も奴なのに。これまでも毎回私が歩み寄ってきた。酒癖悪い、謝れない、そんな奴、要る?

さらにこの時期、私は転職が決まっていた。これから始まる新しい仕事のことにただでさえ緊張していたのに、加えてこんな幼い男のことにまで自分の心を割く余裕はない。きっとこいつは、私が新しい職場でもし楽しく仕事をしていたら、そこに対しても不機嫌になるだろう。自分の知らない世界に行ってしまった私を敵視し、私の新しい人間関係に嫉妬するだろう。足を引っ張る可能性のあるものはすべて排除するしかない。

 

という感じで開き直ったのと、新アルバムが発売されたのもあり、帰り道に聴く曲はLOVE PSYCHEDELICO のMight Fall In Love 、Place Of Love とかになった。Place Of Love の流れで最終的には「他人の関係」のバンドバージョンをひたすら聴き、昼顔で旦那が出かけたと同時に吉瀬美智子がせっせとパンを焼き北村一輝とのデートの準備を爆速でする、あのシーンの感じで家から出て行ってやる、なんなら夜逃げバリに奴の知らぬ間に出て行ってやる、そういう気持ちになった。(実際に引っ越し業者に夜逃げ的な感じで引っ越す時間の指定ができないか問い合わせた、なんか無理そうだったので諦めたけど)

 

引っ越しが迫ったある朝、なんと奴が段ボールを見つけ、呆然とした様子で「引っ越すの…?」と聞いてきた。本当に気づいていなかったのか、とこちらもびっくりした。

そこからは引き留められもしたし、冷静に話すことができたけど、奴が根本的な幼さや酒癖の悪さを変えられないであろうことは想像に容易かったので私の決意は変わらなかった(新居の金も払ってしまっていたし)

 

結局、奴は夜通し私の引っ越し準備を手伝ってくれた。本当は奴が出社したあと業者がくるまでの2時間ですべてを詰め込み、奴が夜帰宅したときに私の荷物だけがなくなっている状況にしてやりたかったけど、見つかってしまったので仕方ない。実際、準備はふたりでやっても何時間もかかったので、もし当初の予定通りいっていたとしたら全然詰められなくて業者に大迷惑をかけていたことでしょう。

 

そんなLeaving Grapefruitsの記憶。

短期間でものすごくいろんなことを考えて、辛かったけど英断をしたあのときの自分を思い出す。

ちなみに引っ越しは服とか必要なものしか持ち出さなかったのと、予定外の引っ越しでびっくりするくらいお金がなくなったので、ベッド・洗濯機・ガスコンロ・冷蔵庫・電子レンジなど家電は一式なにもないまましばらく生きた。半額になった3個入りのパンを少しずつ食べ、服は風呂場で手洗いし、床で寝た。文明の利器のありがたみを再認識した数ヶ月だった。そんな状態になっても、あの男は捨てて良かったし、人間生きようと思えばなんとかなるのだと思った。あと普通に精神的には離婚したときのほうがキツかったので、あのときよりはマシ、と自分に言い聞かせて生きた。

 

おわり。なんかまとめ方も雑になってしまったけど、いろいろ思い出して、あー本当にあのときあの判断をして良かったなと思う。音楽きっかけで過去のこととか今のことを書き連ねるの楽しいな、またやろうかな。