砂漠の中のねこ

息継ぎがしたい

リアル

今日会社へ行くとき久しぶりにミスチルを聴いた。ベスト盤みたいなやつで、その中に「フェイク」があった。

 

大学生の頃、このフェイクをめちゃくちゃ良い感じに分析したブログがあって、当時私はフェイクをちゃんと聴いたことなかったのだけど、その文章の表現力と歌詞に対する分析の視点に感動した。そしてミスチルすごいと思った。

 

そのブログは、後輩の男の子が教えてくれた。というよりも確か、素晴らしいブログを見つけたというような内容で、ブログを引用する形のmixi日記を書いていた気がする。

 

彼は特段ミスチルの大ファンだったわけではなくて、まぁたまに聴く、くらいの感じだったと思う。どちらかというとサカナクションの方がたぶん好きだったと思う。バッハの旋律を夜に聴いたせいです。の話をしたことがある。

 

何においてもセンスの良い彼は、一度見せてくれた部屋の写真もインテリアがおしゃれで、もちろん毎日のファッションもイケていた。田舎の大学で比較的イモっぽいメンツが多かったのに珍しい奴だった。

私と彼は同じサークルだった。サークルのメンバーでキャンプへ行ったとき、管理室の壁に飾ってあった本物の鹿のツノを、「俺が狩った鹿だ」と言う管理人と交渉して1万円で譲ってもらい、そのまま抱えて帰っていた。

 

就職して赴任した先にもあのツノは持って行ったのだろうか。

 

ただでさえ交友関係が広くなかった私は、後輩なんてさらに知り合いがいなかったけど、彼とはなんでも話した。

お互いの恋人の話とか2ちゃんねるの話とか。

たぶんもっといろんな話をしたのに今となってはあまり思い出せない。

馬鹿みたいに広い駐車場のあるスターバックスのテラス席で、延々と喋った。

 

私がその地を去ることになったとき、最後のドライブに行った。どこへ行ったのかは全く覚えていない。餞別に何が欲しいか聞かれて、私は「君が身につけていた何かが欲しい」と答えた。そして彼は私の指には到底ハマらないごついリングをくれた。

 

あの頃、もしも30歳になったときお互いに独身だったら結婚しよう、という話をした。

それまでもその先も彼と付き合うなどの話に至ったことはなくて、でもお互いに、良いねそうしよう、と話した。

燃え上がるような恋愛感情ではなく、一緒に生きたら楽しいだろうなと思った。

 

今年、私は幸せな30歳になった。

彼はどこで何をしているんだろう。

幸せだろうか。

今もときどきフェイクを聴いているだろうか。